お金のこと
老後の心配といえば、トップにあげられる「お金」のこと。関心の高いテーマですね。ここでは、“自分の老後生活に必要なお金”について、具体的に考え準備できるように学んでいきましょう。
年金はいくらもらえるんだろう?老後の生活費はいくら必要なの?皆さん気になるところだと思います。けれど、その答えは
「人それぞれ違います、ご自分で把握しましょう」!
年金支給金額は平均でこれぐらい、といっても被保険者の種類や年数によって違いますし、生活スタイルは十人十色。出費の金額も変わります。だから「自分で自分の収支を把握する」ことが第一歩となります。
とはいえ、手掛かりになる数値があると考えやすいので、参考例を用意しました。下記を参考に自分の場合を想定し、金額を算出してみましょう。
(なお、ご自分で算出した生活費の金額は、あくまでも現時点での参考値です)
上記は、総務省の家計調査年報による数値です。
ここから見えてくるのは、夫婦2人世帯ですと年金とその他(勤め先や事業、内職などによる)の収入が一月214,863円。支出は、食料や住居費、医療費などの消費支出が242,598円と税金や社会保険料などの非消費支出が29,857円の計272,455円。支出が収入を上回っており、57,592円不足しています。
単身世帯の場合は、収入が123,308円、支出が156,953円で、33,645円不足しています。
なお、支出の内訳は下記のようになっています。あくまでも概算となりますが、あなたの場合の金額も算出してみましょう。
支出金額のアタリをつけたら、次は自分の年金額を算出してみましょう。年金額が収入の基本金額となります。
皆さんのもとには、誕生月になると「ねんきん定期便」が届いていますよね。こちらにこれまでの年金加入期間と、これまでの加入実績に応じた年金額が記載されていますので、しっかり確認しましょう。
ただし、こちらはこれまでの実績。基本的には60歳まで加入を続けた後に、金額が確定します。60歳まで加入した場合の見込み額が、日本年金機構の「ねんきんネット」で試算できますので、ぜひ確認してみましょう。
>> 日本年金機構「ねんきんネット」
さて、“自分の”老後生活の収入と支出の金額が、おおよそではあるけれども算出できましたね。
足りてる方―、その調子でがんばりましょう。足りてない方―、心配ですね。けど、あなただけではありません。ほとんどの方が年金だけでは足りないはず。だから老後資金が大きな社会問題となっているのですね。今からこの不足分の準備を始めましょう。
いつまでにいくら必要か?それも自分で算出してみましょう。年金がおもな収入源になる定年退職後などから生きる(と想定する)年数と、不足分の金額をかけ合わせた金額が、準備金の目安となります。なお、年金支給開始年齢は、生年月日によって違ってきます。下記の表も参考にしてください。
「年金の支給開始年齢早見表」にあるように、年金支給開始の年齢は、生年月日によって違ってきます。たとえば、昭和41年4月2日以降生まれの女性はすべて65歳からの支給となります。それ以前の方でも、65歳前に支給されるのは一部なので、全額受給できるのは65歳からと考えていいでしょう。
そうすると、60歳で定年退職した場合、65歳の受給開始まで空白の期間が発生します。その間働かないのであれば、この期間の資金も準備する必要があります。それが+αです。
準備する老後資金の目安が算出できたら、下記の視点から対策を考えてみましょう。
2)保険などを見直し支出をおさえる
3)お金を増やそう
4)働き続ける
1)財産を把握する
まずは、自分の財産を把握しましょう。預貯金や定期預金など現時点での財産のほか、養老保険や個人年金保険など、将来入ってくるお金も把握します。それらをふまえて、目標金額の調整をしてもよいでしょう。
2)保険などを見直し支出をおさえる
対策の1つとしては、支出をおさえること。そのはじめは、保険の見直しです。大きいのは死亡保障付の生命保険。保障金額を年齢や環境に応じ、最低限の金額に減額するとよいでしょう。また、オプション部分を見直し、特約の解除も検討しましょう。
加入している保険を解約して別の商品に変更する場合は、加入年月をチェックしてみてください。1996年3月以前であれば、運用利回りの高い“お宝保険”の可能性が高いです。養老保険や個人年金保険が付いた終身保険が多いと思われますが、こちらはキープしたほうがおトクといえるでしょう。
医療保険については、必要度が高いと思われていますが、じつは「高額医療制度」などの公的保険でカバーできる範囲が広いのです。内容を理解し、民間の医療保険が必要かをじっくり検討しましょう。
どの保険にしても、つい保険料の高い安いに目がいってしまいます。けれど、保険料の払い込み終了時期のほうが、もっと重要です。月々の保険料は多少割高になりますが、60歳時に終了するタイプをおすすめします。
というのも、年金暮らしになったときに、毎月の保険料出費があるとないとでは、負担感が違います。勤め先などでの収入があるときに、できるだけ支払い完了させましょう。
「60歳までにできるだけ支払いを完了させる」というのは、保険だけでなくほかのことにもいえます。住宅ローンや車のローンなども、この機会にぜひ見直しましょう。
3)お金を増やそう
対策の2つめは、お金を増やすことを考えましょう。皆さんはそのために何かしていますか?投資などをすでにやってるよという方は、この項目は読み飛ばしていただいてかまいません。
特に何も…というほとんどの方は、銀行預金なのではないでしょうか。最新データによると、日本人の資産の約6割を銀行預金しているそう。しかしながら、皆さんもご存じのように、預金の金利はスズメの涙ほどです。
全部でなくてもいいんです。銀行預金している一部のお金を、投資で増やすことを考えてみませんか?その種類としては、下記のようにいろいろあります。
・外貨預金
・株式
・個人向け国債
・不動産投資 etc…
それぞれがどういうものか、メリットデメリットなどは別途学んでいただくとして、投資には「元本保証がない」などのリスクがともないます。銀行預金は「元本が保証されている」ので安心、と感じますよね。けれど実は、インフレというリスクがあるのです。
インフレになると、物の値段が上がりお金の価値が下がります。預金している金額に変わりはありませんが、買えるものが少なくなり、もっと進むと吹っ飛ぶ可能性があります。一方、投資信託や株式などは、株価が景気に連動しますので、優良な商品であれば長期的に見ると景気と同じ動きをする。つまり、価値は下がらないといえます。
インフレという視点から見ると、銀行預金のほうが投資よりもリスクが高い。「銀行預金は安心」と思い込んでいた常識が、視点を変えて見るとまったく違った世界が広がっているのです。
これまでの視点をちょっと変えて、自分に合う負担が小さいものから、投資にチャレンジしてみませんか。
4)働き続ける
老後資金を増やすためにもっとも有効な手段、それは働き続けることです。60歳以降からも働き続ければ、空白の期間は短くなるか、無くなります。65歳以降も働けば、その分収入が増えますし、準備する金額も少なくてすみます。
では、どういう働き方をするのか?現在会社などに勤務する方は、定年延長という手があります。そうしたいと望み、実現可能な環境にいるならそれでよいですが、そうじゃないよとか、どうしようかなとか、それはちょっとムリという環境にいる方は、思い切ってこう考えたらどうでしょう?
職業人生は2回選ぶものと考える。
これは人気ブロガーちきりんさんが提唱している、働き方についての発想です。2回といっても、転職の回数ではありません。働く“スタイル”を変えるということです。たとえば、以下のようなパターンが考えられます。
・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・
・休憩型 ⇒ 40代でいったん仕事を辞め、何年間か自分のやりたいことを思い切りやってから仕事を再開
・後半間欠泉型 ⇒ 40代でいったん仕事を辞め、その後はモーレツに働く時期と少しだけ働くまたは完全オフの時期を取りまぜる
・プチ引退型 ⇒ 40代以降は、シーズン引退、ハーフ引退、わがまま引退など働く時間を減らす
・独立フリーランス型 ⇒ 40代で仕事を辞め、若いころの夢であった職業などにチャレンジ
・専業主婦からビジネス型 ⇒ 前半は専業主婦(夫)として家事・育児に専念し、後半は仕事に専念
(ちきりん著「未来の働き方を考えよう」より)
女性が86.61歳、男性が80.21歳と寿命が延びた現代人にとって、従来のように「20代で就職したあと65歳まで42年間働き、定年後は寿命まで余生を楽しむ」のではなく、「20代から40代後半までの1回目の職業人生と、40代後半以降の2回目の職業人生とで職業生活を二つに分け、40代には新たに職業を選びなおし、2パターンの異なった職業人生をおくろう」という考えです。
初めて職業を選ぶ20代の時期、いろいろ悩んだり必死で考えても、経験もなく何もわからない。だから周りのアドバイスや常識に沿った定番コースを選択しがちです。2回目を選ぶ時期は、40代。これまでの経験で、社会の実情や現実的なことも、自分のこともよく分かっているでしょう。だからこそ、「自分で創るオリジナルな働き方」を実現することが可能なのではないでしょうか。もちろん、50代からでも遅くありません。
せっかく働くなら、自分が望む、自分が面白いと思える働き方をしてみませんか?これまでの延長とか、常識的なことにとらわれず、まずは自由に発想してみましょう。発想するだけ、妄想するだけならお金もかかりません(笑)。その妄想から、新たな人生がひろがるかもしれませんよ。
くわしく知りたいという方は、こちらをご覧ください。
>>「未来の働き方を考えよう」ちきりん著(文芸春秋社)
>> ブログ「Chikirinの日記」
お金について学ぶのであれば、税金のことも知っておきたいですね。皆さんに関わりが大きそうな3点を取り上げました。
相続税なんて金持ちの家のはなし、ウチには関係ない!と考えていませんか?関係あるかないかは、計算してみないと分かりません。2015年1月1日より、相続税の基礎控除額が改定されました。そのため、対象となる方が増えたのです。基礎控除額は以下になりました。
基礎控除額は、3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)です。たとえば、相続人が3名の場合(妻と子ども2名)3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円となります。首都圏などの都心部に持ち家がある場合、評価額が高額になる可能性が。そうなると基礎控除額を超える可能性がありますので、要注意です。
ただし、配偶者が亡くなった場合の相続については、1億6千万もしくは法定相続分(2分の1)いづれかの大きいほうの金額まで、無税となります。親からの相続と配偶者からの相続では、条件が違いますのでアタマに入れておきましょう。
会社員だと年末調整があり、確定申告には縁がないかもしれません。しかし、会社を退職してそのまま会社勤めをしなかった場合や、個人事業主、株の売買や配当金などの所得があった場合などは、確定申告が必要となります。
とくに会社を退職しそのまま会社勤めをしなかった方は、確定申告をすると払いすぎた税金が還付されますので、忘れずやりましょう。株の売買での譲渡金や配当金があった場合、会社員であっても確定申告が必要となります。ただし、証券会社などが代わりに納税する方法もありますので、証券会社などに確認しましょう。
「会社勤めで収入のすべてが給与」という「以外」のことが起きた場合、確定申告が必要となるかもと頭に留めておいてください。よく分からない場合は、税理士などによる無料税務相談を利用してみましょう。通常、住まいの自治体や税務署で開催しているので、調べてみてください。
●意外と知らない医療費控除
確定申告には「医療費控除」というのがあります。医療費控除を申告すると所得控除が受けられ、金額などに応じて還付金が支給されます。さらに、住民税が安くなる可能性も。
医療費控除は年間10万円以上払った医療費の、10万円を超えた分に関して適用されます。病院の通院費や入院費、歯医者の治療費、薬代、通院時の交通費などが対象となります。また、生計を一緒にする家族のすべてを合算できます。申告の際、家族の中で一番収入が多い人が申告すると、有利となる場合もあります。
会社勤めの方でも、医療費控除のみの確定申告ができます。病院や歯医者に通った回数が多いかもと思う方は、計算してみてはいかがでしょう。その際には、領収書が必要となりますので、ご留意を。