成長も、停滞も、そっと見続ける場の力 ~勉強会コミュニティ『Club Zakky』~

どう働くのか?どう生きていくのか?─ それを考えること、形づくることは、就活生だけの命題ではなく、40代50代になっても持ち続ける問いではないでしょうか。自分らしい働き方は、自分らしい生き方に重なります。大切なテーマですが、自分一人で考えようとするとなかなか進まないのも事実。そんなとき、身近に先人がいたり、自分の歩みを知ってくれている仲間がいると、とても励みになりますね。
キャリアコンサルタントで終活カウンセラーの石崎公子さんが主宰する「Club Zakky」は、これからの働き方や生き方を考えたい人たちが、毎月集まって学び合う会員制勉強会クラブ。そこでは、どんなことが繰り広げられているのでしょう?石崎さんにお話しを伺いました。
これからの働き方・生き方を考えアウトプットする勉強会
毎月第3火曜日の夜、仕事帰りの社会人たちが千代田区内の会議室に集まってきます。ここは、石崎公子さんが主宰する「Club Zakky」という勉強会。これからの働き方や生き方を考えたい人たちが、毎月1回集まって学び合う会員制クラブです。
この日は開始時間前に、野菜の販売をおこなっていました。メンバーの一人で、長野県安曇野市に移住したKさんが作った野菜を、この会で販売していたのです。贅沢なトマトや変わった形のカボチャなど、新鮮でな安曇野野菜が並んでいて、メンバーの皆さんはあれこれ目移りしているようでした。
メンバーは、会社員や個人事業主、起業準備中の人、自己研鑽をしたい人などさまざま。人数は10名前後と、少人数制。年齢層は30代40代50代と幅広く、女性のほうが多めという感じです。
おなかの空く時間なので軽くつまめる食べものも用意されている
勉強会ではまず、「今年の目標とその確認」を一人ひとり語っていきます。年頭に決めた今年の自分をあらわす漢字一文字を確認しつつ、今月の進捗を報告。計画が進んだ人、思いがけない出来事があった人、あまり進まなかった人と、石崎さんがフィードバックし皆が称賛したり励ましながら進んでいきました。離れた安曇野に暮らすKさんは、Skypeで参加しています。
Skypeで参加するメンバーも
ひと通り終わると、今回のメインコンテンツ「ナラティブ講座~自分史作成のための自己理解~」メンバーYさんのプレゼンです。Yさんが参加したキャリア支援セミナーで、受講した内容を自分なりにアレンジし、メンバーにワークしてもらうというもの。自分のキャリアストーリーを用紙に記載しつつ、そのときの状況を語ったり今につなげることなどをして、自己理解を深めていきました。誰かのストーリーを聞くこと、自分を語ることは、皆さんにとって良い刺激になったようでした。
Club Zakky今までのメインコンテンツ(過去の開催内容から)
たいへん興味深いこの勉強会を主宰しているのは、キャリアコンサルタントで終活カウンセラーの石崎公子さん。(以前、OMORO☆TOMORROWで石崎さんが主宰するエンディングノート講座※も取材させていただきました。※現在は休会中)
この会を始めたきっかけは、どのようなことだったのでしょうか?
石崎さん
『以前通っていた起業セミナーで、自身の起業準備について発表をしたのが始まりです。そこで話して終わりではなく、どうつながるかを考えたほうがいいとアドバイスされて、その後自分主宰の勉強会を始めることにしました。ちょうどその頃友人に、これからの働き方を考えたいから、キャリアのことをロジカルに教えてほしいと言われたこともあって、やってみようと。
その発表を聞いた人にチラシを配って呼びかけたら5人集まったのが最初。そこでは、この会で何をやりたいか、いくらでやりましょうか、から始めました。会社員や小学校の先生、美容師さん、築地の水産関係の仕事をしていた人、テレビ局を作りたいという人など、いろいろでしたね。
その後は、知人で興味を持ちそうな人に声をかけたり、たまたまこの会を知って入りたいと言ってきた人やメンバーの友人などが、入会したり卒業したり。積極的な集客はしていませんが、5年(60回)以上続いていて、参加者はのべ40人以上になりました。
これまでにどんな人が参加しているかというと、より良く働きたい会社員、起業を検討している人や起業準備中の人、個人事業主、会社経営者などさまざまです。共通するのは、自分自身の仕事や働き方、生き方について、自分が納得できるように考えていきたいと思っていることですね。
現在のメンバーは、会社員で会社の仕事とは別に目標を持ちたいという方々、仕事をブラシュアップしようと思っているアート教室主宰の方、ビジネスマインドを育てたいフリーランスのライターの方、東京から安曇野に移住した農業プロデューサーの方、供養や散骨のお仕事されている方などがいらっしゃいます。』
さまざまなバックグラウンドを持ったメンバーが集まる
多様なメンバーが集まっているのですね。それぞれで出逢いがあり、呼び込むというか、ここにふさわしい人が集まってきているのでしょう。のべ人数は多いですが、毎回の参加者は10人以内の少人数制でやっておられますね?
石崎さん
『少人数だとお互いに理解が深まるでしょう。参加するのはメンバーとゲストだけだから、進捗や成長がメンバー間で継続的に確認できるんです。異業種交流会のように知り合いの数を増やすのではなく、深く知り合う。お互いに刺激し合って、ともに成長できるクラブを目指しています。
そして、実際そうなっているんです。私自身、毎月これがあるから自分を振り返るし、何より進むんですよ、皆さんが。一人では進められないことが、ここに来ると背中を押されたり、間違って走りそうになるのを止まれたりできるんです。』
いろいろな背景の人が集まっているので異業種交流会といえなくもないですが、少人数で深く知り合えるというのはあまりないかもしれませんね。
石崎さん
『普通の異業種交流会は知り合いになって終わりだけれど、ここでは並走しているというか伴走しているというか、一緒に走っている感覚なんですよね。それが魅力だと思っています。
それから、見られている意識ってあると思うんですよ。誰も見ていないと、怠けるのもOKだしモチベーションも下がりがち。けど、来月言わなきゃいけないとなると、あんまり手を抜いているとカッコつかないなって。もしも今月「○○に興味を持ったのでちょっと研究してみたい」と言ったら、来月「あれどうなりました?」ってメンバーに言われるでしょうから。実際には言われないかもしれないけど(笑)、もしかして言われるかもしれないから何かしなきゃとは思うでしょうね。
誰にも言っていなかったら、来月でもいいか、再来月でもいいかって延び延びになったりそのまま忘れてしまったりする可能性が高いのでは。ここではもちろん、何でやってないんだって怒る人はいないから、「また来月やることにします」って言える場ですけどね。』
たしかに、新しいことを始めようと思っても、知っているのが自分だけだったら、忙しさにかまけてつい後回しにしちゃうかもしれません。誰かに言うというのは、とても大きな原動力になりそうですね。
主宰の石崎公子さん
そうして「Club Zakky」を5年以上続けてこられた石崎さん、一番うれしかったことはどんなことでしょうか?
石崎さん
『あるメンバーが子供向けのイベントを企画し区と交渉して、初めてやりますっていうのを聞いたとき。あるメンバーが念願のリフレクソロジーサロンをオープンさせたとき。あるメンバーがここでずっとアロマサロンの開業計画を立てていて、場所みつけて独立しますって言ったとき。お花持ってオープンのときに行ったんだけど、すごくきれいなところで感動しました。
やはり、「これをやりたい」ってメンバーの言っていたことが、実際に始まるのを見るのはすっごくうれしいですね。あと、自分の戒めにもなるかな。主宰者ちゃんとしろよ、おいって気分(笑)』
皆さん素晴らしく成長されて頼もしいですね。逆に苦労されたことは、どんなことでしょうか?
石崎さん
『独立などしたら卒業される方もいます。そうした卒業や、転勤、多忙などで辞める方もいますが、一気に人数が減るとちょっと寂しいですね。少人数制でやっているから、あまり大勢に増やしたくはないのだけれど、急に減ったときはへこむこともありました。次のステージに行くから卒業で、皆さんの活躍を見るのはうれしいのですが(笑)』
なるほど、うれしいけど寂しい。卒業式で巣立つ生徒を見送る先生のような気持ちなのでしょうか。
さて、こうした勉強会コミュニティを運営されていて、気づいたことなどありますか?
石崎さん
『コミュニティってどこもそうだけれど、人が空気を作ると思うんです。どんな人が来るかで、いくらでも変わってしまう。ここでは特にそれを大切にしていて、まずはゲスト参加からスタートしてもらっています。もしちょっとな、と思う方がいたら入会はお断りしようと考えているんですが、今のところそれはありません。』
こちらのメンバーは、皆さん素敵な方ばかり。良い空気を感じますね。
石崎さん
『こうした勉強会、やりたいと思えば始められると思うんですよ。その中で、一番大事なのは場の空気だと思うんです。
それから、年末が近づく時期になると「来年の漢字どうしようかな」って、きっとメンバーは考えると思うんです。Club Zakkyでは来年の自分をあらわす漢字とともに、その一年を過ごすからなんだけれども、実はそれだけでもすごいことだと思っていて。ふつうは、そんなことも考えずに年が暮れちゃうでしょう。
けど、これがあるから何にしようかって考え始めるってことは、自分がどうやって生きていきたいかを考えているのとイコールじゃないかしら。それってけっこう価値あることだな、と我ながら良いコンテンツだと自負しています。』
来年の自分をあらわす漢字、それは、自分は来年どういう年でありたいか、という意思表明でもありますね。たしかに、それを考えるのと考えないのとでは、年末時の到達点がまったく違うところになりそうです。
石崎さん
『あともうひとつは、見守る価値を再認識しました。見守るっていうと、地域で高齢者や子供対象という感じがするけど、どんな世代でも「今あの人こうだよね」って、人が見ていることって大きいんじゃないかと思いますね。タレントが見られていると綺麗になるように、人って見られていると背筋が伸びるでしょう。
そして、見続ける、見守り続けるっていうのが大事。継続するって難しいんですけれど、そこがポイントだと思います。ここのメンバーは地域に関係なく、いろいろな場所から集まってきますが、地域だけでなく社会全体がそうなるといいなと思っています。』
石崎さん、ありがとうございました!
こうしたコミュニティがあれば、自分の成長が加速されそうですね。また、ご自分で勉強会を主宰するというのもアリなのではないでしょうか。その際は、この「Club Zakky」からの知見を参考にしていただけるとうれしいです。
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勉強会コミュニティClub Zakky(クラブ ザッキー)
東京都千代田区の会議室にて月一回開催
https://travessia.biz/menu/club-zakky/
主宰:石崎公子さん
キャリアコンサルタント/終活カウンセラー
中堅総合広告代理店に勤務し、企業各社の広告・PR・ 販促活動に携わる。新卒で入社の後、勤続25年を経て2007年退社、独立。高齢者向け商品を提供する法人のコンサルティングやマーケティング支援、終活に関するコンテンツ提供、終活系講座講師、コミュニティ運営や個人相談など幅広い活動を行う。
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