想いを分かちあえる棺『エコフィン』~ウィルライフ(株) 後篇~

その人のライフスタイルを表現する、地球環境に優しい棺『エコフィン』。
後篇は、表現できる棺「エコフィンis」がもたらす本当の価値はどんなものか、本質的なところまでお聞きしました。それぞれの方の想いで表現された棺の写真もご覧ください。
カッキー:
エコフィンのもうひとつの特長として、“気持ちを表現できる”ということ。こちらは「エコフィン is」になりますが、棺で気持ちを表現するなんて、私は考えてもみなかったです。棺にメッセージがかけたり、カバーがつけられたりって、そんなことできるんだ!って。
安田さん:
これも、しっかりお別れするにはどうすればいいんだろう、という完全にグリーフ視点なんです。
今って、ほとんどが親と離れて暮らしているし、最期は病院入りっぱなし。施設に入ってても入院して、亡くなってから駆け付けるとか。昔は家で看取っていたから、元気だった親がだんだん弱っていって、できることができなくなり、痩せていって衰えて…というのを一緒に過ごしてきたじゃないですか。
過程を共にして、最後は全身でその死を受け留めていたと思いますが、今ってごっそりそれが抜け落ちている。だんだん死を覚悟するという機会がなくなってると思うんですよ。で、突然葬儀になる。それじゃあパニックにもなりますし、よくわからない放心状態で葬儀屋さんまかせになっちゃってもしかたがない。
だけど、誰でも必ず死ぬんです。だったらその死をしっかりと見つめて、それまでに自分では何ができるんだろう、何を伝えたいんだろう、そう考える時間が大事なんじゃないかな、と。もし、生きてる間にそれができなかったら、お葬式でしっかりお別れをすることが必要だと思うんですよね。
カッキー:
自己主張ではなく、お別れのときの気持ちを表すものなんですね。
安田さん:
そう、その人らしく。お葬式って自分一人でできるものじゃないですよね。関係性の中でどうしたいかっていうものなので、自分がどうやって生きてきたかっていう集大成だと思うんです。
都内の公営斎場に行ったことありますか?同じような式場の部屋がいっぱいあって、複数の葬儀が同時におこなわれていますが、あれ「○○家」ってなかったら、みんな一緒ですよね。よく聞くのは、間違った部屋に座っていたっていうケース。本人がいれば分かるのに、同じような作りなので分からない、気づけない。
カッキー:
別人のお葬式に出てたなんて、笑っちゃうけど笑えない話ですね。
安田さん:
同じような作りの式場でも、棺を一目見たときに、ああお母さんこれ好きだったわねとか、あの人っぽいよねとか、彼女があの着物着てたの思い出すわねとか、「エコフィン is」であればその人を思い出すきっかけになるんです。
カッキー:
そういった装飾は、宗教的には問題ありませんか?
安田さん:
お寺さんとかあるかもしれませんので、なぜこうしたいかを住職に伝え相談してください。大切なのは、ご本人や遺族のこうしたいっていう気持ちだと思うのです。そこを伝えて、話し合っていただければ。
それと、こうしたいっていう気持ちがあるなら、前もって段取りしておく必要があると思います。お寺さんでも、葬儀社さんでも、その場では難しいということもあるので。そこをぜひおさえてください。
カッキー:
メッセージを書かれたら、すごく嬉しいでしょうね。カバーもホント素敵!ですが、つけるのって難しくないですか?
安田さん:
初めてつける方は難しいかもしれません。遺族でしたら、ただでさえ平常心でないときですし。だから事前準備するとか、サポートしてもらうといいですね。
カッキー:
提携の葬儀社さんはつけ方分かるんですか?
安田さん:
はい、分かりますので手伝ってもらってください。あと、事前にエコフィンラボに来て、つけ方を覚えていく方もいらっしゃいました。
カッキー:
なるほど。カバーは手作りできるんですよね?こちらも難しいのでしょうか?
安田さん:
簡単です!型紙を用意していますので、型紙通りに切るだけ。余裕があれば、端をミシンで縫ってください。
カッキー:
プレーンな布であれば、型紙通りに切るだけ、と。
安田さん:
じつは着物で作ることをお勧めしています。なぜかというと、着物をほどく時間ってその人の人生を紐解く、自分だったら自分の人生を振り返る時間になる、と思うからです。だからあえて手間をかけるところにこだわっている。手間をかける時間を大事にしたいんです。
もちろん、プレーンの布でもOK。好きな布、想い出の布、想い入れのある布であればいいと思います。
カッキー:
ワークショップに参加するのが一番いいですね。できない場合は?
安田さん:
型紙をネットでダウンロードできます。組み立て方も動画でアップしているので、参考にしてくださいね。
>>型紙のダウンロードはこちら ※現在は休止中
>>「エコフィンisの組み立て方」(動画)はこちら
カッキー:
「エコフィン is」はどこで入手できるのですか?
安田さん:
エコフィンラボやオンラインショップ(※)、取扱い葬儀社、市民団体などですね。一番いいのは、ご自分が依頼する予定の葬儀社さんに確認すること。エコフィンを扱っているのか、いないのか。扱っていないなら、扱ってもらうよう言ってください。オンラインショップなどで購入する場合は、自分で持ち込みたいことを話してください。受け入れられないなら、交渉ですね。
( ※現在は休止中)
カッキー:
オンラインショップでは売れていますか?
安田さん:
電話のほうが多いですね。最近は、中村仁一医師が書いた「大往生したけりゃ医療とかかわるな」という本にエコフィンが出てまして、それを見たといって問い合わせが増えてます。
カッキー:
意識の高い方が、行動してたどり着くんですね。エコフィンのお客さまは、そうした感度の高い方や、自分を持っていらっしゃる方、環境に関心の高い方が多いのですか?
安田さん:
決してそんなことはないです。お母さんはお花好きだったからとか、お父さんは山登りが好きだったから、“自然が好きだから”という理由でエコフィンにする方がいたり。孫の将来を楽しみにしていたとか、被災した人のことを心配していたなど、何か“世の中の役に立ちたい”というところに結びつける方など。
なかには全然エコじゃないのに、エコフィンを選んだ方も。なぜかというと、そのお父さんずっとやんちゃで周りに迷惑かける人だったので、奥さんと娘さんが“最後ぐらいは役に立たせたいよね”っていって選んだんですって。
カッキー:
そんな方も…。
安田さん:
人間誰しも、いいカタチで送りたい送られたいっていう気持ちがあると思うんですよ。その気持ちの寄せどころが棺だったんです。だから、直葬で選ばれる方も多いです。直葬って気持ちの寄せどころをなかなか作りにくいじゃないですか。だから、唯一ある棺はこれがいいっていう方もいます。
愛する人が亡くなってものすごく悲しいけど、植林で木に生まれ変わったと思いたい、という方もいます。そういうそれぞれの方のお気持ちを理解するのは、なかなか難しい。
カッキー:
ひとりひとりの想いを聞かないと分からないですね。外側からだと、環境に関心のある方とか、そういうふうに理解しちゃいます。
安田さん:
この前、ある生協組合の方にその話をしたら、「棺にも心を寄せることができるんですね…!ぜひ、会員さんに向けて話をしてほしい」と。
今って悲しみ方、お別れの仕方が分からない時代ですよね。気持ちの表し方が分からない。でも皆さん、求めているんですよね。やり方が分からないだけなんだと思います。気持ちの寄せどころ、しっかりお別れするところを作ってあげないと。
カッキー:
これまでで強く印象に残ったエピソードは?
安田さん:
Kさんという「エコフィン is」のお客さま第一号の方かな。もともとお葬式の勉強会に参加されていて、アロマの先生ということもあって環境への意識も高い方でした。エコフィンを知って、使いたいと言ってくださって。その中で、お父様が亡くなられました。
エコフィンを知っていたので、あの棺で父を送りたい、着物のカバーをつけたいとおっしゃられて。急だったので時間がなくて、私たちがカバーを作って差し上げて、それをご家族でつけて仕上げられた。
それから時がたっても、一番思い出すのは、家族全員でエコフィンを組み立てたときのこと。見送った家族がみんな納得して、「いい葬儀だったなあ」と心から思い返せるわ、と言ってくださいました。
カッキー:
家族全員で組み立てを。
安田さん:
その後、期せずしてうちの母が亡くなって、自分が使うことになりました。それで、おっしゃってることがよく分かったんです。
最初は、カバーを作るときがグリーフワークだと思ってたんですよ。誰かのために作る、自分の死をしっかり考えて作るって。作るときが大切な時間と思っていたんだけれど、もちろんそれもそうなんだけれども、それって個人的体験じゃないですか。それがお葬式のときに、棺を組み立てて、カバーをつけて、きれいに仕上げてって、みーんなで棺を作るという“共有体験”ができたんです。
そういうのって今の葬儀にはないものだと思います。昔はやってましたよね。みんなで死に装束に着替えさせたり、身体拭いたり、式場のセッティングしたり、お料理作ってみんなで食べたり…。周りの人が手伝いに来てたんですよ。でも今ってぜんぶ葬儀社がやってくれるから、遺族さえもお客さんになってしまう。
その中で、家族や親族や友達が主体となって、亡くなった人のために何かを作り上げる、共有できる時間っていうのは何より大切なことなんだって、自分でやってみて、心から思えたんです。
カッキー:
棺をみんなで一緒に組み立てることで、想いを分かちあえるんですね。
安田さん:
今って手伝ってもらうことに遠慮しちゃうんだけど、手伝ってって言うとみんな快く手伝ってくれるし、後から手伝って良かったって言ってくれます。そういう交流ができるはずなのに、何かあっても葬儀社のスタッフに頼んでしまう。
たとえば受付なんか、昔だったら従妹のお姉さんや近所のお兄ちゃんに頼んでたと思うんです。でも今は、お金払って葬儀社の人にやってもらってしまってるんですよ。
そういうちょっとしたお手伝いって、心の交流ができる。そういう時間が何より大切ではないでしょうか。
カッキー:
そうですね。つい悪いかなと思って気が引けるけど、頼まれたほうも大変かなって思うけど、後からやって良かったって思うと思います。
カッキー:
今後こうなったらいいな、という展望をお聞かせください。
安田さん:
誰もが、自分一人でがんばるんじゃなくて、ちょっとづつ助け合うコミュニティがあっちこっちに少しづつでもできてきたら、世の中がちょっとだけ変わるというか、暮らしやすくなるんじゃないかな。そして、大切なことが次の世代に伝わっていくんじゃないかな、と思います。
それが葬儀という場を通して、死を見つめることを通して、少なくともお葬式の場面ではみんなで助け合うという状態であってほしい。
けれど、お葬式ではもうその人はいないじゃないですか。であれば、もっと前の段階でそれに気づいたほうがいい。そしたら、それまでの時間を一緒に過ごすことができる。後悔もちょっとは減るんじゃないかな。
カッキー:
分かっていても、なかなかできずに…。
安田さん:
死を避けて、なるべく見ないように見ないようにとしているから、結局お葬式の場になってしまう。お葬式の場でしっかりお別れしてほしいのはもちろんですが、できればお互いが生きているときであったら、もっといいんじゃないかと思います。
だから、前もって棺のカバーを作りましょうと言っているのは、そこに気づくための一つのきっかけになれば、と思ってのことです。
カッキー:
本当のお別れになる前に気づくことができれば、その後の気持ちや、大切な人との関係は違ってきますね。
安田さん:
「グリーフケア」というのがありますが、しっかりお別れできていない状態で死を迎えるから、深いグリーフになるんです。そういうグリーフ状態の人を、どうやってみんなで支えるかも大事。けど、もっと早く気づいていれば、ここまで深いグリーフにはならないんじゃないかって思います。
後悔を引きずって生きていくよりは、もっと早い段階で一緒にがんばろう、最後の最後まで見届けようという覚悟をもつ。そうすれば後悔せず、しっかりとお別れができるのではないでしょうか。
カッキー:
すごく深い話をお聞かせいただきました。本日はありがとうございました。