相続のこと

自分の「相続」について、考えてみましょう。
といっても、ものすごく先のことだと思うし、リアルに感じられない…ですよね、あたりまえです。じゃあなぜ今考えるのかというと、自分と周りの人との関係を今一度確認し、遺すということを通して、自分の大事にしたいことに気づく良い機会になるからです。
それに、今ある程度の方向性を決めていれば、状況が変化したときにも修正しやすいですよ。
というわけで、レッツゴー!

★そもそも「相続」ってどういうこと?

人が亡くなると、その人の権利義務、つまり財産と債務が継承されます。これが皆さんご存知の「相続」です。
継承先は、通常は法的に「法定相続人」といわれる人たちで、おもに配偶者や子どもなど、亡くなった人(被相続人)と血縁のある関係者が該当します。配偶者や子どもがいない場合は、兄弟姉妹、親、甥姪などとなります。

・配偶者(亡くなった方から見て妻または夫)は、常に法定相続人
・第1順位の法定相続人は、子供、孫、ひ孫
・第2順位の法定相続人は、父母(父母両方が亡くなっている時は祖父母)
・第3順位の法定相続人は、兄弟姉妹

*第1順位である子供以下が全くいない場合は、第2順位である父母が法定相続人となる
*第2順位の父母(または祖父母)もいない場合は、第3順位である兄弟姉妹が法定相続人となる
*兄弟姉妹がいない場合は、甥姪が法定相続人となる

上記にあたらない場合の例は、以下などがあります。

また、「法定相続分」として、分割の割合が民法で定められています。

*配偶者がいない場合は、血族相続人の相続順位の高い順より100%の割合となります

★割合も相続人も、自由意思で決められる

法律で定めてあることを説明しましたが、これを守らなければならない、というものではありません。法定相続人全員の合意が得られれば、もし遺言があったとしても使わずに相続分の割合は自由に話し合いで決められます。また、遺言があれば、法定相続人でない人や団体へも相続できます。

最近では、「相続が争族とならないよう遺言を書きましょう」といった気運が高まっていますが、有効な遺言がなくても、相続人全員が分割内容に合意できれば、その合意内容で相続できるのです。

ただ、核家族化が進み、高齢の親と独立した子ども世帯が離れて住むケースが多くなったことで、家族間での意思疎通がむずかしくなっているのも事実。親子で思いを共有する機会が少ないため、遺言を残すことで自分の気持ちを伝えようとする親が増えています。

のちに無用な争いを起こさないため、それから法定相続人以外の人に相続させたい場合、何より、自分の意志の実行性を高めるという意味では、遺言はもっとも実際的な方法です。

★遺言のほかに「家族信託」という方法も

相続に自分の意志を反映させるために、遺言はとても有効な手段ですが、唯一の方法ではありません。あまり知られていませんが「家族信託」という方法もあるんですよ。

家族信託とは、信託法という法律を利用した財産の管理・運用方法で、家族の状況に合わせて自由に組み立てることができる財産の管理・運用に関する当事者間の信託契約です。「目的」を持たせることが特徴で、「何のために使う財産なのか」を設定することが重要となります。

登場人物は三者で、通常、財産管理・運用を任せる人(委託者:親)、任される人(受託者:子)、恩恵を受ける人(受益者:親)でスタートします。これを相続、つまり亡くなった後のことだけを考えるのではなく、生きているときから「このために」と目的を設定し、亡くなった後にも継続させる、といったこともできるのです。

たとえば、両親が家族信託を使って、自宅を含めた一定の財産を「自分たちの幸せのために使う」という目的を設定、管理・運用を子ども(達)に任せる。生存中は「幸せ」という目的に合致していると判断したら、必要なときに使う。一方の親が亡くなっても信託契約は続行し、二人とも亡くなった後に残りの財産を子どもたちに相続させる、という契約にすることも可能です。

受託者や監督などの役割を子どもたちが担えば、家族間で話し合いせざるをえないので、親が生きているときに、生きる目的で使う財産の話ができるわけです。おのずと、相続に対する思いやその時々の状況も共有できるようになるでしょう。

家族信託は生存中から亡くなったとき、さらにその後までの財産管理、継承を自由に柔軟に設計できます。受託者を家族でない第三者にお願いすることも可能なので、おひとりさまの相続に取り入れてもよいかもしれません。

なお、設計の自由度がかなり高いのですが、そのため分かりずらいものではあります。精通している専門家にサポートしてもらわないと、難しいといえるでしょう。しかし、遺言だけでなく、このような方法もあることを覚えておくとよいでしょう。

★おひとりさまの相続を考えてみる

よく聞く相続の事例は、子どもがいる家族を想定しての話がほとんどではないですか?では、子どもがいないおひとりさまの相続はどうなるのでしょう?
法定相続人と相続分(割合)は次のようになります。

子どもがいないおひとりさまの場合、相続人は配偶者と親、または兄弟姉妹となります。もし、自分が亡くなる前に何もしていなかったら、遺された人たちの関係を考えると、法定相続分になる可能性が極めて高いでしょう。そうではなくこうしたいという希望がある場合は、事前に有効な遺言を用意するなど、しかるべき対策を講じておいたほうが良いでしょう。

特に子どもがいないご夫婦の場合、夫が「財産を全て妻に相続させる」という趣旨の遺言を残さなければ、夫の兄弟姉妹(又は甥・姪)に相続財産の1/4の権利があるので、妻に義兄弟姉妹との分割交渉という負担を強いることになり、最悪、1/4分を払うために自宅を売却せざるを得ない、というケースも有りうるのです。

また、配偶者も親兄弟もいない場合は、国庫に納められます。国庫ですと使い先は分かりません。もし、こうしたことに使ってほしいとか、お世話になったあの人にあげたいなどの気持ちがある場合、対策は必至です。

★寄附するという選択肢も

国庫に納められるのには抵抗があるという場合や、世の中の役に立つことに使ってほしいという気持ちがある場合には、寄附という選択肢もあります。

国や地方の公共団体、公益法人、NPO法人などの公益性が高い団体へはもちろん、個人や他の団体へも可能です。ただし、公益法人だと相続税はかかりませんが、個人や他の団体ですと相続税や贈与税が発生します。先方への考慮として、事前に調べておくとよいでしょう。

娘が二人いるけれども、土地家屋は娘たちに相続させず、すべて公益法人に寄附すると決めている方がいました。子どもたちも皆、納得済みだそう。
このように、自分の相続は自由意思で決めることが可能なのです。

★考えてみる、話してみることから始めよう

相続のこと、なかなかすぐに答えが出るものではありません。けど、考えなければ始まりませんよね。自分の場合、何も対策しなければどうなるのかを把握し、だったらどうしたい?というのを自分に問いかけてみませんか。

しかし、自分だけで考えているのにも、限界が。法律やしくみがよく理解できていないと先に進めないし、いろいろな事例を聞いてやっと想像ができたりもします。そして、現時点での考えを口に出して話してみることで理解が深まり、自分の気持ちに気づくものです。

けど、誰にでもかまわず話せるものでもないし…ってときは、そういう意識を持った人たちのセミナーに参加したり、専門家に相談してみるとよいでしょう。初回相談は無料のところもありますよ。


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